04.拳論アーカイブ

新人レスラー死亡事故 送検へ * 2009/06/16(火) ※「拳論!取材戦記」より転載 

 本日の東京新聞に掲載されたとおり、東京湾岸署は、業務上過失致死の疑いで、佐野直、菅原伊織、笠原寧の3名を今月中に書類送検する方針を固めた。

 昨年10月、由利大輔さんが新木場ファーストリングでの合同練習中に「ダブルインパクト」を半ば強要され、首の骨を折って死亡した事故は、責任者である佐野、菅原が遺族に説明しようともしない酷いもので、さらにそれをプロレスメディアが黙殺する酷い状況だった。
 事故直後、僕は当事者に連絡を試みたが、佐野には人を通じて「どうせ俺が悪者にされるから」と拒まれ、菅原は一切の応答をしてこなかった。プロ レス記者を含むいくらかのメディアにもこの事故について伝えたが、その反応は冷たいものだった。現場にいた者で証言してくれたのは笠原一人だったが、その 彼は菅原の代理人を名乗る関係者から脅迫行為を受ける始末だった。

 結局、僕が自分の夕刊フジの連載コラムで書いたのが第一報となり、その後は産経新聞やテレビ朝日、実話ナックルズなどで大々的に伝えたが、10 月に起きた事故で半年以上も送検に至らなかったのは、様々な理由がある。逃げ腰で嘘をついている人間がいたのも要因だったと思うが、ひとつは警察が当初、 業務上過失致死ではなく、それより軽い過失致死で捜査を進めていたことだ。確かに解釈が難しい事故ではあると思うが、今は担当から外された担当刑事の態度 が「熱心な対応ではなかった」と遺族が嘆いたいてのは事実。これは具体的な酷いやり取りを聞いているが、捜査に影響を与えないために明かしていない。十分 に捜査がされていないような印象から心労が重なり、遺族のうち2人も入院者を出してしまい、それが「漢」のハンドルネームで知られるSさんが代理人で動か ざるを得なくなった理由だ。

 僕のところには聞いたこともなかったプロレス団体の代表を名乗る人間から「当事者の問題だから記事を書くな」という抗議や、当事者が所属する団 体の関係者からも次元の低い内容の連絡があったり、会社役員であるSさんのもとにもカルト団体を名乗る妙な連中から延々と嫌がらせがある中、僕が司法に携 わるボクシング関係者に頭を下げてヘルプしてもらう最終手段のような形で、業務上過失致死での刑事告訴を決めた。笠原はたった一度の個別聴取で「これで聴 取は終わり」と告げられていて、前述ボクシング関係者の助けがなければ捜査はそのまま終了していたはずだ。
 風向きが変わったのは明らかに刑事告訴提出以降だ。笠原が再度聴取を受けたのはもちろん、由利さんのデビューまでたった2度しかなかったリン グ練習や、試合に至るずさんな経緯の目撃者もここで初めて聴取を受けている。自分が不利になることも承知の上で、遺族に唯一、直接の謝罪・説明を行なった 笠原の正直な証言も非常に大きなものだった。ある人物に「証言するなら職場に乗り込んでクビにしてやる」と脅されながらも毅然とした対応をとったのは、僕 だけでなく渡辺宏志ら先輩レスラーの心も動かし、刑事告訴の材料となる僕ら独自調査の進展に役立った。

 この死亡事故で何が要因となったか、誰が責任を負うべきかは司法の判断に委ねられるが、そのまま放置していれば十分な案件となっていなかった可 能性の高いものを、ここまでの形にしたのは紛れもなく第3者の怒りの意思で、ファンや関係者はもちろん事故への対応に納得しない人間たちの力だった。僕は 佐野と直接話をしたし、複数の人物が菅原と何度か直接連絡をしたが、その返答は責任のかけらも感じない酷いものだった。この2人はいま現在も遺族と向き 合っていない。「なぜ遺族に謝罪・説明しないのか?」という問いに両者とも人を通じて「警察に全て話しているからきちんと対応している」と答えたのだが、 それは刑事対応で当然の義務であり、死亡事故に関わった民事対応とは無関係だ。交通事故で相手を死なせた加害者が「警察に行ったから十分に対応した」と言 うようなもので、自分の置かれた立場を全く理解していない。こんな常識も説明しなければ理解できないような人間が「俺はプロレスラーだ」と自称して、正当 な大先輩選手たちと肩を並べた気分に浸っている状況を業界が黙認するのも我慢しがたいものがある。一部の関係者に至ってはそれを非難するどころか応援する 側にまわっているのだ。

 また、この件で遺族を傷つけるような物言いをし、笠原に嘘をついてまで強引な取材をしたTBS記者や、佐野の言い分を鵜呑みにし、笠原には名前 も名乗らず編集部に呼びつける電話一本しただけで記事にした週刊プロレスの取材手法にも疑問を投げかけておく。記者という職業が時に無礼な存在になるのは 重々承知しているが、自分の親族が亡くなって同じ事をされたらどう思うか・・・そんな質問をされなければ真剣に事故を受け止められないのなら、悲惨な事故 を悲惨だと伝える役目を果たす能力はないと思う。この刑事告訴を動かしたのがそんな無能な一部メディアではなく、悲劇をまるで自分のことのように感じた者 たちなのだから。(片岡亮)

「新人プロレスラー 由利大輔さん 悲劇の事故死を追求する会」
http://m-7095a792cf65f500-m.cocolog-nifty.com/blog/cat35564883/index.html
 → 今は裁判前で喉元で止めていることが多いです。事態が進む中でまた時が来たら「知られざる真実」を追記していきます。これまで事故の真実追 及に協力してくれた方々、「漢」ことSさんを応援してくれた多くの方々に改めて御礼申し上げます。三沢さんが亡くなって真のプロレス継承者を失った損失と 同じく、プロレスを冒涜するような状況で人が亡くなったことも同じ業界の悲しみだと僕は思ってます。本来なら僕ではなくプロレス村に住む記者がこの件に立 ち上がってほしかったです。

(以上、「拳論!取材戦記」 http://boxing.dtiblog.com/ より転載)
※元記事 http://boxing.dtiblog.com/blog-entry-1335.html

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プロレスラー由利大輔さん死亡事故、勇気ある証言者たち * 2009/01/26(月) ※「拳論!取材戦記」より転載

プロレスラー由利大輔さん死亡事故、勇気ある証言者たち * 2009/01/26(月)

 月末発売の「実話ナックルズ」(ミリオン出版)で、新人プロレスラー由利大輔さん死亡事故の続報を、ご遺族の許可のもと書かせて頂いた。

 この事故は、弱小プロレス団体の合同練習で、ずさんな練習により起こった悲劇で、問題点は2つに分類できる。ひとつは事故の背景。なぜ素人を簡 単にリングに上げる世界になっているのか、根本的な問題がある。チケットを売ることを条件に素人を上げるのは今に始まったことではない。由利さんについて 責任者の菅原伊織は「運動神経が良かった」としているが、果たして本当にそうだったのか、僕は疑問があったので検証を続けた。現場にいた人たちが嘘をつい たり口を開く姿勢が見られないため、独自に目撃証言などをコツコツと集めてきた。そこで由利さんが生前残したメールも入手(誌面で公開)。彼が決して楽し くプロレスに関われていた状況ではなかったことが判明した。

 もうひとつは責任者の逃亡姿勢。これが本件に対する批判につながっている。目の前で親しい仲間が亡くなって、状況説明もせず葬儀にも行かない… というのは常識的な行動とは言えない。それを埋める部分では幸い、驚くほどの情報が集まっていて「裁判で証言してもいい」と名乗り出た者がたくさんいる。 法廷での争いを前にしている以上、現時点では明かせないことが多いことは察してもらいたいが、中には「これが人間のやることか!」と憤りを感じたものがあ る。
 また、その中には事故とは直接関係ない“被害”も少なくない。もちろん証言の精査も必要ではあるが、これが事実であれば「プロレスラー」とい う人気商売の悪用が故に起こったこと…とも受け取れる話で、事故と関係ないからと切り捨てられない部分がある。由利さんの事故が「未熟な人間が先輩気取り で起こしたもの」と定義できるなら、その「先輩気取り」がエスカレートしレスラーではない人にまで被害が及んでいた…とも解釈できるからだ。いずれにせ よ、その正誤や善悪の判断は僕の仕事ではなく、第3者の手によっていずれ判断されることだろう。

 ブログという「日記」だから書いてしまうが、正直、この件の取材は気が重く「気が進まない」と何度も口にしてしまった。仕事として考えればこん なに割りの合わないものはない。記者という職業が事実を伝達するだけの卑しい職業だと自覚しているが、それでも自分がいた世界、それも知人が責められる内 容の取材など、昨日まで挨拶してくれた人に憎まれるなんて悲しすぎる。大きな対価が受け取れているわけではないし、取材にかかった経費も一切請求していな い。テレビ朝日で佐野直と会ったとき、僕は思わずインディープロレス時代の自分になってしまった。「俺たちが一番ゴミだと言われてきたんじゃないのか?な んでもっと下を作るんだ?プライドを取り戻せよ」と訴えるうちに、恥ずかしながら涙もこぼしてしまった。それでも取材を続けたのは自分なりのいろいろな理 由がある。菅原をリングに上げた経緯を知っている自分、プロレスラーに憧れた由利さんの気持ちが分かる自分、そして、弟・友輔さんをはじめ多くの人に頼ら れている自分。もちろん、部外者の僕自身はいくら批判されてもいい。「おまえを潰す」なんていう怪電話、「警察に告訴する」という某団体からのメールも受 け流すしかない。問題は僕なんかより勇気ある証言者たちだった。

 現在、僕と「漢」ことSさんが事故追求の正面に立っているように見えるが、これは中心の証言者たちを守るためでもあった。特にSさんはわざとそ の矢面に立つよう振舞ってきた。その理由は「相手」が常軌を逸した発言をして人を脅すような人物だったからだ。「猫の切り首を玄関に置いてやる!」などと いう発言を直接耳にした女性Kさんが、実は恐れながらも中心的に情報収集に励んできたのだ。今回の記事ではKさんの存在も明記しているが、彼女は報復の恐 れもあって転居。僕もガードマンを兼ねて引越しを手伝ってきたほど慎重に行なった。他にもプロレス界隈にいた関係者たちも勇気を持って立ち上がってくれ た。渡辺宏志選手のような男気のある方も仲間との軋轢を恐れず意見を出してくれた。実は、彼は由利さんの死の直後、菅原本人に「きちんと対応すべきだ」と 電話した人物だった。他にも「例え当事者から恨まれても」と証言してくれた人が何人もいる。ご遺族には大輔さんの死がショックで健全な生活が送れなくなっ ている方もいて、ご遺族の代わりに動くため、また証言者を守るため、Sさんは何の見返りもないのに正義感ひとつで正面に立って動いてきた。Sさんや証言者 たちを見て、僕も心が動かされてきた。彼らに比べれば、僕の前述の愚痴など小さなものだ。今後、記事という仕事になるかは分からないが、それに関係なく、 ご遺族が墓前に良い報告ができるようになるまで僕はこの事故を追求していくつもりだ。そして、改めて問う。現場にいた人たち、これで本当にいいのか、と。

 p。s。フリー記者の立場では微力だけに、多くのご理解の声、またご意見を頂ければありがたいです。それと決して弱音を吐かないSさんですが、実際の人物像は非常に優しい紳士で、彼に対しても敬意をもってもらえたらと思います。

(以上、「拳論!取材戦記」 http://boxing.dtiblog.com/ より転載)

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プロレスラー事故死 由利大輔さんが残した言葉 * 2008/12/24(水) ※「拳論!取材戦記」より転載

プロレスラー事故死 由利大輔さんが残した言葉    * 2008/12/24(水)

 本日の産経新聞が社会面のトップ記事で、僕が報じてきた新人プロレスラー、由利大輔さんの事故死を改めて掲載した。「無名選手の事故」という観点で切って捨てられるようなものと思われるかもしれないが、この事故が起きた背景や問題点をきちんと認識すれば、社会的にはこれぐらい大きなものだということを証明した。
 ひとつはあまりに幼稚な集団による事故後の無責任な対応があり、もうひとつは「起こるべくして起きた」という事故の背景がある。僕がこの件について真剣に向き合ったのは、由利さんが死の直前に残した言葉が理由だ。

「俺が被害者でよかったよ・・・加害者だったら俺、責任とれないから」

 これは自らの手で親友を死に至らしめてしまった笠原寧に向けたものだ。笠原は会社の同僚であった由利さんに相談されてプロレス界へ呼び入れた人物。責任を痛感する中、横で代表者の菅原伊織が「代表はいない」と嘘をつき、さらには慰謝料を払わずに済む方法はないかという耳を疑う言葉を聞いたという。笠原は周囲からマスコミへの証言を止められていたが、悩んだ末に独断で僕に全てを正直に話してくれた。そこで聞いた言葉が上記のもの。僕は愕然とした。誰がこんな言葉を若者に残させたのか。

 笠原は涙ながらに「菅原が逃げても、僕が全て責任取ります」と語っていた。彼には妻子がいるが、この件で家庭は崩壊寸前だった。奥さんとも話をした。「大変申し訳ありません」とハッキリした口調で毅然とした態度を取っていた彼女に罪はない。僕が労いの言葉をかけると泣き崩れた。「一番大事なのは家族、他の人が逃げる姿勢の中で旦那さんは誠実な態度を取っているんだから、一緒に力を合わせて償っていってほしい」と伝えた。胸が痛かった。

 僕は笠原から日頃の練習内容を聞いたが、それはかつて僕が認識する「必要最低限」の3分の1もないような酷いものだった。由利さんをリングに上げた経緯も聞いたが「まずプロレスのやり方とか仕組みを教えて・・・」という返答だった。僕がかつて高校卒業後に入ったプロレス界の常識とは大きくかけ離れていた。一番最後に教えられるものが最初に来ている。まず基礎体力、次に基本的な受け身から・・・という当たり前のことも、僕が言うと笠原は「そうだったんですか・・・」と驚いていた。つまり、笠原自身がプロレスの何たるかを知らずにリングへ上がっていたため、由利さんに正しく教えることもできないというお粗末な状況だった。でも、練習責任者の佐野直、代表者の菅原伊織はそれが間違っていることは知っていたはずだ。

 これをただの不運な事故で済ませられるのか。早い段階で当事者が遺族と面会し適切な説明を行なっていたら、また状況は違ったと思うが、根本的な問題を解決しない限り、明日同じようなことが起こってもおかしくはない部分がある。チケットを売ってくれれば素人でもプロのリングへ上げる、誰が見てもそんなことおかしい。ボクサーはたった2回の練習でプロの試合なんてできない。他のスポーツでも同様だ。しかし、人気団体では“素人”のタレントがリングへ上がっているではないか。この事故を意識してか「かなりの練習を積んでいる」なんて設定までしている。末端では「プロレスなんて誰でもできる」なんて囁かれている状況を、プロレス界の人たちが「ウチは大丈夫」と他人事でいていいものなのか。「被害者でよかった」なんて言葉、プロレスに夢を持って入ってきた若者に言わせちゃいけない。

 現時点で笠原以外の当事者でご遺族にきちんと説明に出向いた者はいない。それどころかネットで現役続行を宣言したり、事故後も何食わぬ顔でリングへ上がっている当事者たち、あろうことか事故現場であった会場で記念試合を行ない遺族の気持ちを逆なでした者もいる。さらには僕のところにこの事故を報じること自体に「陰湿な文章だ」などと猛抗議してきた関係者さえいる。レスラー以前に人間性という部分でも未熟であるという印象が拭えない。僕もその未熟な場所にいた人間であるからこそ実感している。(片岡亮)

 事故直後から事実解明に尽力して頂いた「漢」ことSさんのサイト
http://x17.peps.jp/jikotuikyuu?id=jikotuikyuu&_cus=kbmocd

過去記事 新人プロレスラー由利大輔さん死亡事故
http://boxing.10.dtiblog.com/blog-entry-1078.html
http://boxing.10.dtiblog.com/blog-entry-1011.html

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25日・追記↓
 由利さんの練習や試合を見ている関係者より重要な証言が得られました。由利さんは数少ない受け身の練習でも「全く受け身ができなくて困っていた」というもの。これは菅原、佐野ら先輩選手たちも認識していたそうで、受け身ができないため、試合の打ち合わせでも当初の予定を変えて、他の人に技を受ける指示を菅原がしていたとのこと。菅原の「運動神経が良かった」という話とは食い違います。この証言通りであれば「受け身ができない」とハッキリ分かっていた人間にダブルインパクトをさせたことになります。漢ことSさん、心ことNさんとも協力して、今後できる範囲で事実解明し、ご遺族にも伝えられたらと思います。差し出がましいかもしれませんが、由利さんの死がなぜ起こったのか、うやむやにはできませんのでご理解をお願い致します。

(以上、「拳論!取材戦記」 http://boxing.dtiblog.com/ より転載)

※同記事のウェブ魚拓→http://s03.megalodon.jp/2008-1227-1914-19/boxing.10.dtiblog.com/blog-entry-1108.html   

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新人プロレスラー由利大輔さん死亡事故 * 2008/12/02(火) ※「拳論!取材戦記」より転載

新人プロレスラー由利大輔さん死亡事故   * 2008/12/02(火)

 故人の死から49日となりました。プロレスの世界に夢を持って入るも、右も左も分からぬまま命を落とすことになってしまった由利大輔さん、またご遺族の無念さは察するに余りあります。こうした悲劇についてしっかり向き合うことが関係者、またプロレスに関わった者の責務かと思います。この場を借りてお悔やみを申し上げます。(拳論一同 7日追記)

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 昨日夕刊フジにて改めて報じた由利大輔さんの死亡事故について、可能な範囲で補足をしておきます。

 この件は、たまたま当事者の選手が僕の後輩だったことから情報を頂いたもので、その後もあらゆる関係者より情報提供を頂きましたが、本来は当事者が詳細を明かすべきものと思い、猶予をもって続報を控えていました。しかしながら、10月18日の死亡事故、24日の死亡後、11月末になっても当事者が口を閉ざしたままで、ご遺族からは「何の説明もないまま」と怒りの声も届き、その状況を明かすためにやむなく記事公開に踏み切りました。
 警察の捜査の渦中で慎重になるべき部分はありますが、これまでご遺族、現場にいた選手、彼らと連絡を取っている知人・関係者、そして故人の知人たちから得た情報をいくつか書いておきます。全ては証言をもとにしたもので、事実に差異がある場合はぜひ報告してください。

・18日夜、新木場の試合会場のリングを借りた合同練習があった。
・主催者は佐野直で、大半の参加者は佐野から連絡をもらって集まったもの。「二瓶組RofC(我道会館)」と「グレートプロレスリング」、「ガッツワールド」の3団体による合同練習という形。
・終電で帰った選手もいたため、最終的に残ったのは佐野直ほか、菅原伊織、笠原寧、ガッツ石島、ダイスケ、ジパング・ザ・グレート、アップルみゆき、サトモ、また選手でない佐野の連れの女性、ジパングの連れの女性、別の知人男性。
・深夜1時、「RofC」の3人、菅原と笠原、故人の3人で「ダブルインパクト」をやることになり、体育用マットをリングに敷き、菅原が故人を肩車。周囲でこれを笠原がコーナーから攻撃をした。この際、由利さんが頭から落下してしまい、意識はあるものの体が動けなくなってしまった。
・救急車を呼び、由利さんを都内病院に搬送。由利さんの家族が菅原に「責任者は?」と聞いたが「ユニットだから代表はいない」と返答。ただし、笠原の方からは菅原の発言とは違う“正しい認識”が話されたという。その後、菅原と笠原は湾岸署に出頭し事情説明を行なっている。
・由利さんが24日に死去。直後に一部の選手が他の当事者たちに「葬儀に参列しないよう」連絡をしていたという。由利さんの知人は当事者が葬儀にすら顔を見せていないことに激怒、これを記事にも反映させたが、実は入稿後に葬儀には「菅原、笠原の2名が訪れていた」ことが会葬者により判明。関係者の配慮があって、ご遺族の見えない場所にいたため来場していなかったものと思われる。葬儀には「現場にいなかった数名の選手・関係者」が参列したが、菅原・笠原以外の当事者は誰も来場せず、弔電なども一切なし。
・また当事者間での話の食い違いも見られている。佐野はある関係者に「ダブルインパクトをかけるとなった時にその場に居た全員で止めたのに、菅原は聞かなかった」と話したというが、現場にいた者に聞くと「止めた事実はない」としている。
・由利さんは4月に入門、わずか4ヶ月後の8月にデビューし2試合を行なっているが、所属団体が常設リングの道場を持たないため、デビューまでにリングを使った本格的な練習はわずか2回だったという。デビュー時に喧伝された「空手の実力者」というのは嘘の発表で格闘技経験はなく、大半の練習はウェイトトレーニング中心。
・現在の弱小団体の大半は基本がノーギャラ。チケットを数枚買い取るか、売ることを条件に出場するため、主催者はほとんどノーリスクで、素人でもチケットが売れるなら簡単にリングに上げる傾向になっているという。

 他にも情報は多々ありますが、現時点では心配したファン・知人関係者らがある程度の事故内容を把握できる範疇にとどめておきます。

 個人的見解になりますが、この事故はまず練習内容に大きな誤りがあるとしか思えません。まず「体作り」そして「受け身の基礎」が徹底された上でやれるはずの大技の実験を、最初からいきなりやらせたというものでしょう。関係者の間には「由利さんは本番に強い」なんておかしな評判があったようで、これは例えばサーカス団に入ったばかりの新人を「君は運動神経がいい」と、いきなり空中ブランコの練習をさせたら落下して死亡した、というようなもの。ハッキリ言えば指導者の素養がない人間たちによる合同練習だったと言えます。
 これは現場にいたレスラー自身がろくな練習経験がないからであって、一人でもまともな練習を経験してきていれば「それより前にこれを身につけろ」と順序が分かるはず。そもそも技術を学びたければ若い選手で集まるより、熟練者に指導を求めるはずで、それをしないのは「地道な基礎練習は省いて早く試合で目立つことをやりたい」という風潮に他ならず、「プロレスの技術を学びたい」のではなく「リングに立ってかっこいい技を見せたい」だけの連中だということです。こうした状況の背景には「誰でもプロレスラーを名乗れる」ことが挙げられます。
 これがもしプロボクシングだったらどうでしょうか。プロライセンスを持たない素人兄ちゃんが自分らでリングを借りて「ボクシングルール」の興行を行なっても、誰も彼らを「プロボクサー」とは呼びません。最近まで女子ボクシングが無法地帯でしたが、JBC認可の女子ボクシングがスタートしたと同時に非認可の団体・興行は消滅しました。

 僕はプロレス時代、グローブを付けて頑なにキックボクシングスタイルを貫きましたが、これは言い換えればプロレスの技術に乏しいままそれをやることが嫌だったからです。奥村茂雄選手が無償で開いてくれたリング練習にはこっそり通っていましたが大した技術は身についてなく、それでも試合に出られるズサンな世界感が嫌で、最終的にはプロレスから去り近年は格闘技の試合のみやっていました。プロレス界がどうなろうと僕の知ったことではないですが、メジャー団体の選手がプロレスのブランドに誇りを持ちたければ、団体間で協力してプロライセンス制度を作り、共通審査を通過した者以外は「自称レスラー」とし、ライセンスのない人間を使う団体は「プロレスと認めない」とする・・・そんな一案を提示したいです。確かな技術を持った人間だけがやれるものでないと、今後また由利さんのような悲劇が起こると思います。ご遺族は現在、精神的にかなり厳しい状況に置かれています。その悲痛な声を聞いても、選手関係者は他人事でいられるんですか?(片岡亮)

 ※この件に関しては故人の知人らが事実検証の会を結成して動いております。そちらで専用の窓口サイトを設置することになると思います。

 p。s。「当事者の選手が僕の後輩だったことから」としていますが、その後輩からは一度も連絡をもらってません。念のため。

(以上、「拳論!取材戦記」 http://boxing.dtiblog.com/ より転載)

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菅原伊織に関して * 2008/10/26(日) ※「拳論!取材戦記」より転載

菅原伊織に関して    * 2008/10/26(日)

 今朝、僕のところにショッキングな連絡が多数入った。
「菅原伊織が練習生の死亡事故を起こした」
 というものだ。中には「説明しろ」と猛抗議するような内容もあった。

 伊織は僕が過去に所属したプロレス団体「二瓶組」にいた格闘家で、いわば後輩にあたる。立ち技の真剣勝負の大会でも一緒になったことがあって、セコンドに付いたこともある。ただ、僕が二瓶組に所属したのは随分前のことで、現在は代表の二瓶組長とも伊織とも長く音信不通。現在も付き合いがあるのは鴨居長太郎とモンゴルマンだけで、これはプロレスと無関係な個人的なもの。伊織が現在も二瓶組に所属しているのかすら知らない。

 だからといって無視できる内容ではない。届いた内容は人命に関わること。「18日に危険なプロレス技を試す練習中の事故なのに、伊織は遺族に対して失礼な態度をとった」という。事実を確認するため、過去の住所録から探し出した伊織の携帯電話にかけてみたが「キン肉マン」の音楽が鳴るだけで、本人が使用しているかは不明(たぶん本人のものという気がするが)。

 僕が知る伊織は目立ちたがり屋でナルシストな半面、礼儀正しく性格的に問題は感じなかった。体は細くとてもプロレスラーには見えないが、立ち技の真剣勝負もできる男で好印象はあった。ただ、その人物像とは別の部分で、僕は危なさをずっと感じていた。何しろ彼がプロレスのリングに上がるようになった頃、専門の練習経験はゼロに等しいままだったからだ。僕が知る限りはその後も本格的なプロレスの練習はほとんどしていなかった。そもそも二瓶組はプロレス団体だが合同練習はゼロ。みんなが見よう見真似でやっているような状況で、僕は定期的に先輩選手について横浜の道場に通っていたが、他を誘っても来る人はナシ。僕自身もプロレスのスキルに乏しいが、その僕が見ても「ヤバイんじゃないか」と思うような状況があった。

 結局、今のプロレスというものは見よう見真似でもそこそこやれてしまうということ。よく見ればラリアットを受けてマットに倒れる瞬間や、ロープに飛んだ瞬間の動きで差が分かるのだが、誰でも入れるからこそ無数に団体・選手が広がったのだろうし、タレントでも大した準備なくリングに上がっている。正直、技をやるのは誰でもできる。殴って蹴って投げればいい。問題は「受け」だ。メジャーの選手がやるような大技を熟練者の指導もなく練習していれば事故は起きて当然。伊織とは何年も会っていないが、基礎練習を乗り越えていない彼が人に教えられるほどの技術を身につけていたとは思いにくい。昔、彼のやっていた空手のHPを見たとき、プロレスラーになりきれてもいないのに「ラリアットの打ち方」「逆エビ固めのかけ方」なんていうコーナーがあって失笑したこともある。

 少し前に伊織と同じリングに上がった選手に電話してみた。彼によると、被害者とされる練習生は既にデビュー済みで試合も見たのだという。
「伊織は空手ベースの試合スタイルだから、それを教えているのかと思ったら普通のプロレスをやっていて正直、基本はできていなかったですね。最近は僕らが新人時代に当たり前にやらなくてはいけなかったことを、既にデビューしている選手ができていない。チケットを多く売ってくれるから、というだけでリングに上げるんですよ」

 現在、事故の真偽や詳細は全く分かっていない。言えるのは、こうした情報が出てきた以上、きちんと説明しろ!ということだけだ。事実なら事実、違うなら違う、もし事実なら大変なこと。偽りなく状況を全て明かすべき。仮に伊織が現場責任者であったなら重大な過失が認められる。ネット検索して伊織のブログを発見したが、確かに大会前日の急な欠場が書かれている。

「ボクは死んでも死に切れない想いです。責任はとります。とりあえず、今言いたい事を詰め込みます。ボクみたいな選手を誰よりも愛してくれて、応援していただき、ありがとうございました。個人的に支えてくれたみんな、ありがとう。今はさようならは言わない」(http://blog.livedoor.jp/iorispower/)

 事故を裏付けるような記述にも見えるが、もし事故が本当なのであれば、自分のファンにかっこつけた捨て台詞を吐いている場合か、と思う。願わくば「幻さん、あれ全くのガセです」と電話が入ることを祈りたいが・・・。ただ、いずれにせよ、無法地帯のプロレスというジャンルにこういうケースが起きても「やっぱりな」としか思えない現状はあると思う。被害者はライセンスなき世界の犠牲者だ。(片岡亮)

 p。s。詳しい状況をご存知の方がいたらご一報頂ければと思います。

⇒ その後の調査で事故があったことが事実だと分かりました。本当に残念です。伊織に対してではなく、被害者に対してです。何がどうあれ若者が「プロレスをやってみたい」と思って挑戦した結果、人生が終わってしまったという最悪の結末に至ってしまったのはあまりに惨すぎます。僕がでしゃばることではないですが、伊織はプロレスラーを名乗る以前に社会人としての対応をすべきだと思います。少なくとも被害者の知人から僕のところに届いた声は怒りに震えています。被害者の方にはこの場を借りてお悔やみ申し上げます。

(以上、「拳論!取材戦記」 http://boxing.dtiblog.com/ より転載)

※同記事のウェブ魚拓→http://s01.megalodon.jp/2008-1224-1226-43/boxing.10.dtiblog.com/blog-entry-1011.html

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