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プロレスラー由利大輔さん死亡事故、勇気ある証言者たち * 2009/01/26(月) ※「拳論!取材戦記」より転載

プロレスラー由利大輔さん死亡事故、勇気ある証言者たち * 2009/01/26(月)

 月末発売の「実話ナックルズ」(ミリオン出版)で、新人プロレスラー由利大輔さん死亡事故の続報を、ご遺族の許可のもと書かせて頂いた。

 この事故は、弱小プロレス団体の合同練習で、ずさんな練習により起こった悲劇で、問題点は2つに分類できる。ひとつは事故の背景。なぜ素人を簡 単にリングに上げる世界になっているのか、根本的な問題がある。チケットを売ることを条件に素人を上げるのは今に始まったことではない。由利さんについて 責任者の菅原伊織は「運動神経が良かった」としているが、果たして本当にそうだったのか、僕は疑問があったので検証を続けた。現場にいた人たちが嘘をつい たり口を開く姿勢が見られないため、独自に目撃証言などをコツコツと集めてきた。そこで由利さんが生前残したメールも入手(誌面で公開)。彼が決して楽し くプロレスに関われていた状況ではなかったことが判明した。

 もうひとつは責任者の逃亡姿勢。これが本件に対する批判につながっている。目の前で親しい仲間が亡くなって、状況説明もせず葬儀にも行かない… というのは常識的な行動とは言えない。それを埋める部分では幸い、驚くほどの情報が集まっていて「裁判で証言してもいい」と名乗り出た者がたくさんいる。 法廷での争いを前にしている以上、現時点では明かせないことが多いことは察してもらいたいが、中には「これが人間のやることか!」と憤りを感じたものがあ る。
 また、その中には事故とは直接関係ない“被害”も少なくない。もちろん証言の精査も必要ではあるが、これが事実であれば「プロレスラー」とい う人気商売の悪用が故に起こったこと…とも受け取れる話で、事故と関係ないからと切り捨てられない部分がある。由利さんの事故が「未熟な人間が先輩気取り で起こしたもの」と定義できるなら、その「先輩気取り」がエスカレートしレスラーではない人にまで被害が及んでいた…とも解釈できるからだ。いずれにせ よ、その正誤や善悪の判断は僕の仕事ではなく、第3者の手によっていずれ判断されることだろう。

 ブログという「日記」だから書いてしまうが、正直、この件の取材は気が重く「気が進まない」と何度も口にしてしまった。仕事として考えればこん なに割りの合わないものはない。記者という職業が事実を伝達するだけの卑しい職業だと自覚しているが、それでも自分がいた世界、それも知人が責められる内 容の取材など、昨日まで挨拶してくれた人に憎まれるなんて悲しすぎる。大きな対価が受け取れているわけではないし、取材にかかった経費も一切請求していな い。テレビ朝日で佐野直と会ったとき、僕は思わずインディープロレス時代の自分になってしまった。「俺たちが一番ゴミだと言われてきたんじゃないのか?な んでもっと下を作るんだ?プライドを取り戻せよ」と訴えるうちに、恥ずかしながら涙もこぼしてしまった。それでも取材を続けたのは自分なりのいろいろな理 由がある。菅原をリングに上げた経緯を知っている自分、プロレスラーに憧れた由利さんの気持ちが分かる自分、そして、弟・友輔さんをはじめ多くの人に頼ら れている自分。もちろん、部外者の僕自身はいくら批判されてもいい。「おまえを潰す」なんていう怪電話、「警察に告訴する」という某団体からのメールも受 け流すしかない。問題は僕なんかより勇気ある証言者たちだった。

 現在、僕と「漢」ことSさんが事故追求の正面に立っているように見えるが、これは中心の証言者たちを守るためでもあった。特にSさんはわざとそ の矢面に立つよう振舞ってきた。その理由は「相手」が常軌を逸した発言をして人を脅すような人物だったからだ。「猫の切り首を玄関に置いてやる!」などと いう発言を直接耳にした女性Kさんが、実は恐れながらも中心的に情報収集に励んできたのだ。今回の記事ではKさんの存在も明記しているが、彼女は報復の恐 れもあって転居。僕もガードマンを兼ねて引越しを手伝ってきたほど慎重に行なった。他にもプロレス界隈にいた関係者たちも勇気を持って立ち上がってくれ た。渡辺宏志選手のような男気のある方も仲間との軋轢を恐れず意見を出してくれた。実は、彼は由利さんの死の直後、菅原本人に「きちんと対応すべきだ」と 電話した人物だった。他にも「例え当事者から恨まれても」と証言してくれた人が何人もいる。ご遺族には大輔さんの死がショックで健全な生活が送れなくなっ ている方もいて、ご遺族の代わりに動くため、また証言者を守るため、Sさんは何の見返りもないのに正義感ひとつで正面に立って動いてきた。Sさんや証言者 たちを見て、僕も心が動かされてきた。彼らに比べれば、僕の前述の愚痴など小さなものだ。今後、記事という仕事になるかは分からないが、それに関係なく、 ご遺族が墓前に良い報告ができるようになるまで僕はこの事故を追求していくつもりだ。そして、改めて問う。現場にいた人たち、これで本当にいいのか、と。

 p。s。フリー記者の立場では微力だけに、多くのご理解の声、またご意見を頂ければありがたいです。それと決して弱音を吐かないSさんですが、実際の人物像は非常に優しい紳士で、彼に対しても敬意をもってもらえたらと思います。

(以上、「拳論!取材戦記」 http://boxing.dtiblog.com/ より転載)

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